もくじ
ミステリーであってやはり小説「ひそやかな花園」
角田光代さんの小説「ひそやかな花園」のおすすめ記事になります。
「今の私のルーツってなんだろう?」そんなことを考える作品となりました。
ルーツとは、単純に昔からたどる血縁もありますし、今の私の生き方、考え方はどういう背景からきているのかということも含みます。
もっと極端な話、今考えていること、積もり重なって今のこころの在りかってどこからきてるのだろうかとそんなことを考える小説でした。(すこしおおげさでしょうか・・・。)
「ひそやかな花園」は小説ということで、少し難しいかな?とっつきにくいかな?と考えてしまう方もいるかもしれませんが、
ミステリー要素もふんだんにあります。
読みやすい内容ですし、ストーリーとしても良く出来ております。
タイトルの「ひそやかな花園」とはどういう意味だろうかと考えながら読み進めると面白い作品だと感じます。
そして読後に考えることがたくさんありました。
※この記事はネタバレはありません。
いつもは作品の内容から個人的な感想を書いてしまうので、今回は、たまにはオススメするだけの記事も良いかなと思いました。
こんな方へオススメな小説です
「ひそやかな花園」を読書するポイントになります。
- ミステリー要素が含んでいて退屈せずに読みたい方
- 自分のルーツとは何か?どうして生まれたのかなど悩む人へ
- いま、少し生きづらさを感じている方へ
ミステリー要素が含んでいて退屈せずに読みたい方
小説なので少し読むのが面倒だなと思ってしまいがちですが、角田光代さんの文章はとても読みやすいです。
簡潔な書き方です。
わかりづらい表現が少ないので読んでいてストレスを感じない文章が好きです。
そしてストーリーもどんどん引き込まれていく内容だと「ひそやかな花園」から感じました。
登場人物は7人。全員ひとりっ子。彼らが知った出生にまつわる真実。
お話のキーワードとしてはこのようなところかと思います。
私は本の背表紙に書いてある「あらすじ」を読んだ時に上のキーワードをポイントに興味を惹かれ購入いたしました。
今の私のルーツってなんだろう? どうして生まれたのか?など悩みがある方へ届けたい作品です。
「今の私、自分って、どうして存在しているのだろう、なんで生まれたんだろう?」たまにそんなことを考えたりしませんでしょうか。
これは簡単には答えの出ない内容です。
特に生きている中で、こころがまいってしまっている時、なぜ生まれたかの問いに対して「ネガティブ」に考えてしまいがちな時もあると思います。
そんな時にひとつ救いのような気持ちを「ひそやかな花園」から感じました。
特に私は親って勝手だなとか、なんでこんなに苦しい人生に放り込まれたのか、などと良く考えたりしました。
落ち込むとそういう考えになる時がまだ、たまにあります。(あまりこころが良い状態でない時です。)
今の自分の存在についてネガティブになる時に一度手に取ってみることをオススメいたします。
例えばですが、親との関係や生まれてきた環境に悩み苦しむ時、私はまわりとの「違和感」と良く言ったりします。
まさに「ひそやかな花園」では生きる中で「なにか周りと違う」という気持ちを抱いた人物が多く登場します。
登場人物が子供の頃にサマーキャンプで出会い、突然会えなくなります。
幻だったような夏。
その後それぞれの成長していった過程で感じる生きることへの違和感。
そんなところから物語が進んで行きます。
この小説に限らず、本を読んでいて凄いなと感じるところのひとつに、ふだん生きている中では覗くことができない他人の違和感を知れたりする部分があります。
ふだんの生活の中で、表面上なんとなく会話を合わせたり、仕事の人間関係でお互いの腹を探りあったりする中ではわからない気持ちを知ることができます。
私が単にふだん、こころから話せる人間がいないのかもしれません・・・皆様、心の底から今までの過去について話せる人っていらっしゃるのでしょうか・・・。
どちらにしてもリアルで深く突っ込んで聞くのも、聞かれるのも苦手な人間なので小説などから人の気持ちを探ることが多いのです。
生きづらさを感じている方へ
そして、生きづらさを持っている方も、読後に感じる部分があるのではないかと思う一冊です。
角田光代さんの小説は「生きづらさ、違和感」を持つ登場人物が他の作品でも多い気がします。
たいがいの人は生きづらさを感じているのでしょうか?
私の場合は色々悩んだ末に考えが一周し、生きづらいのが基本、デフォルトだと感じ、それが「当たり前」のことだと最近やっと気づいた感じもします。
本を通して、同じような気持ちを感じることができると安心します。
特に「生まれて来た環境」で悩んでいる方、それを人に言えずに自分の中だけで押し殺して生きてきた方に読んでいただきたいです。
「ひそやかな花園」のストーリーには秘密がたくさん出てきます。
それぞれに持った「ひそやかな花園」
自分のルーツってどんなんだろう、どこからきて今があるのだろう。
話が最初に戻りますが、そんなことを良く考えていた時がありました。
そして私の家系にある「ひそやかな」なこと。
母を育てた親(わたしにとって祖父母)は血がつながっておりませんでした。
私の住んでいた東京の祖父母は血縁ではありません。
私はそれについて悩むことがありませんでした。
ちゃんと今いる母、父がおりますし、実際に私はその二人から生まれた子供です。
母は貰い子でありながら、とても良く育てられていたんだと昔のアルバムを覗くと感じます。
祖父母には子供が授からなかったとのことです。
そして母は祖父の仕事場の縁で実父から引き取られたとのことです。
母を生んだ実母は、出産した後にすぐに亡くなってしまい今後の母のことを考えて養子として引き取られたとのことです。
大人になって真実を知った母は実父とはじめて電話で話しました。そして近いうちに会おうという話をしたのが最後、会う前に亡くなりました。
実父との会話は一度だけ、それも、その電話だったとのことです。
本当の父親との会話は電話での「声」で一度だけです。
その一度だけに母は苦しんだのかもしれません。
このあいだ、押し入れを少し片付けした時に私の子供の頃のアルバムが出てきました。
わたし以外の家族のアルバムも出てきまして、母の過去を古い写真から知りました。
時間が経った今、その写真を眺めると「とても幸せ」な風景に映るのです。
「なんて普通の光景なんだろう」それはとてもありふれた日常で、普通すぎてそれが幸せすぎるように映って・・・。
今の私の状況と比べると少し胸が苦しくなったりします。
過去の母は幸せそうに写真から感じるのに、なぜ、お酒に走り病んでしまったのだろうって・・・考えるのです。
母本人が以前、口にしておりましたが「血のつながった両親ではなかった」という部分に、人知れず悩んだところがあったらしいのです。
しっかり育てられた、文句を言う隙がないくらい大切に育てられた。
だから母は育ててくれた両親に感じたうまく言えない気持ちを誰にも打ち明けることができなかったのだろうかと、
何か胸の中に絡まった糸のほつれがどんどん母の中だけで知らずに大きくなり、いつしか修正できなくなったのだろうかと・・・。
そう思うと母も大変だったのかなと少し感じました。
大人になり、結婚をし、子供を出産し、そして父との関係、家庭生活などで本当の意味で心から困ったとき相談できる人がいなかったのではないかと。
そして、ちゃんと育ててくれたから、母の育ての親から離れることができなかったとも言っておりました。
祖父、祖母も育てた母を手離せなかったようです。
それが老後に身よりがいなくなるなどの理由なのか、ずっと子供の頃から大切に育てたひとり娘だから手放せなかったのか、
その真実はわかりません。
両方あったのかなとも感じます。
どちらにしても、結婚時に父が母の家にくることになりました。
今の時代で考えるとすごいことです。
そして、父も父でそれはたいへんだったんだろうなと。
結婚相手の実家で暮らし、毎日仕事に行き、そんな生活、心が落ち着くのだろうか?
私だったらストレスでダメになると思います。
ただ昔の写真をみるとあまり苦労があったようには感じず、とてもあたたかな雰囲気が伝わってくる家族写真ばかりでした。
人から思えば母は不自由なく育ったのだから「そんなにたいしたことないのではないか」と思われるかもしれません。実際に私もそう思いました。しかし「血縁ではない」育ててくれた親へのしがらみが、どこか母にとっては苦しかったのだろうかと…。
何が幸せで不幸かなんて本人ではないから、ほんとうの気持ちを知るのは難しいです。
もし私が不自由なく育ち、両親も離婚せず、母のお酒におぼれるような姿を見ないで育ったとします。
でも、もし高校生くらいになってある時に実はほんとうの親ではなかったと知ったらどう思うだろうか・・・。
母に話を戻しますが、子供を育てていく中で、親(わたしの祖父母)から離れられずにいつまでも「育ててくれた」という部分で家を出ていくことができずに苦しかったと言っております。
子供の頃はお酒でおかしくなった母を恨むしかなかった私は、母の生きてきた背景を考えることは難しかったです。
もちろん父についても。
しかし、昔の私の頃のアルバムをみて思うのです。
子供の頃はとても幸せだったのではないかと。
少なくとも、両親は子供を産むときに不幸にするつもりはなかったのだと写真をみて、今更ながらとてもそれが伝わってきました。
「ひそやかな花園」おすすめも含めまとめです
「ひそやかな花園」について話を戻します。
まとめになります。
この小説は最後のエピローグに全てが詰まっている作品だと思います。
この物語の登場人物のひとり「紗由美(さゆみ)」のこころの変化がとても素敵です。
はじめは紗由美自身、生まれてきた境遇を恨んでとてもネガティブな、もうまさに私のような性格の人物なのですが、
最後に生まれてきたことについて、美しい心を教えてくれます。
たまにこの小説を手にとり最後のエピローグを読むだけで、もうそれで少しこころが救われる気持ちになります。
はたしてどんな経緯をたどり、それぞれの登場人物が「自身の生」について、答えを見つけることができるのでしょうか。
血縁、違和感、人に言えない感情、そんな生きづらさを持った方へ読んでいただけたらと思う一冊です。
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