もくじ
斜に構えるヒロインを中心とした物語(ネタバレなしです)
「この空の上で、いつまでも君を待っている」を読書いたしました。
本の帯をみて、ついつい買ってしまった本になります。
以下が帯に書かれていた部分です。
夏の日を駆け抜けた命の物語。
一読目は切ない涙
二読目は温かい涙
が溢れだす
小説のジャンルはライトノベル系になります。
あまり読まないジャンルでした。
特に深い意味はなかったのですが、大衆小説を良く読みがちだったので、たまには違ったものを読んでみても良いかなという気持ちがありました。
上に記載した本の帯の「命の物語」というところにも少し惹かれました。
本の表紙がこちらになります。
あらすじを簡単に書きます
ネタバレなしですが、読後にどんな作品だったのか、私なりに簡単に書きます。
主人公は女子高生の市塚美鈴(いちづか みすず)と同級生の男の子、東屋(あずまや)の二人を中心に物語が進みます。
ヒロインの美鈴(みすず)の性格は簡単に書くと、将来の夢に対しての想いもどこか冷めていて、ドライ、高校生にして生き方、物の見方も少しひねくれていて、自分は周りと違うんだとそんな考えを持った女の子です。
勉強もできて、頭も良さそうなのですが、どこか人をバカにした性格がある子です。
一方、同級生の男の子、東屋(あずまや)の性格も変わった登場人物で、雑木林でガラクタを集めて誰にも知られずロケットをひっそりとつくるような男の子でした。
ヒロインの美鈴にとって理解しがたい行動をする東屋とある時に出会います。
美鈴と東屋、二人の物語になります。
雑木林で、ガラクタを集めて宇宙に行けもしないロケットをつくる東屋の「死んででも見たい何かって」なんだろうかと、おもいながら読み進めた作品でした。
ヒロインの美鈴の視点から東屋の考えていたことを、しだいに理解していくストーリーが面白かったです。
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個人的に好きだった描写 美鈴の「姉」の存在が好きでした
今回読書しました、「この空の上で、いつまでも君を待っている」の個人的に好きだったポイントは、登場人物のひとり、美鈴の姉でした。
はじめにも書きましたが、物事に対して、冷めて、ドライ、ふだんまわりをどこかバカにしているような美鈴ですが、それは姉に対しても同じような態度でした。
美鈴の姉は特に物語の中で名前のない登場人物ですが、印象に残りました。
美鈴の気持ちを良く理解したお姉さんであり、美鈴の気持ちを手助けした人物であったと感じます。
現実主義なヒロイン美鈴とは正反対に、小説から感じる大学生の美鈴の姉は、少しだらしない、もしくは楽観的、でもどこか達観したところがあった登場人物でした。
ヒロインの美鈴が高校生で、姉が大学生、さして年齢もかわらない姉妹。描写では、高校生の美鈴の方が考え方も価値観もしっかりしてそうですが、美鈴の姉がぽつりと放った言葉は印象に残りました。
「・・・・・・私以外が全員バカ、ねえ」
「バカは決まってそう言うんだよ、美鈴」
「この空の上で、いつまでも君を待っている」P44より引用いたしました。
この姉の台詞はヒロインの美鈴には聞こえておりませんでしが、この台詞は、この物語の美鈴に対して、もしくは読者に対して訴える言葉だった気がします。
物事に対して現実的で、ある意味正論で、一般的には正しいであろう美鈴の考えの描写がところどころあるのですが、美鈴の考えとは対極な雰囲気の姉の台詞の方が物事の本質を示している気がしました。
この姉は、雑木林でガラクタを集めてロケットを作ろうとしている東屋に対して、馬鹿だと抱いていた美鈴の気持ち、そして東屋がなぜロケットづくりに一生懸命なのかも、美鈴の話から感じとり、美鈴よりも理解していたのではないかと感じます。
美鈴の姉の登場は物語の中で少ないのですが、物語の解釈の手助けもしてくれた重要な人物でした。
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「この空の上で、いつまでも君を待っている」から感じたこと
この小説を読んで感じたことになりますが、まず夢に対して悲観的と言えばよいのか、リアリストというのか、冷めた目で人生をとらえているヒロイン、美鈴(みすず)でしたが、
彼女の未来は何に救われたのか、
そんな面白さを考えた小説でありました。
この小説はヒロインの美鈴が、馬鹿で一見無意味なことをしいている、理解不能な同級生、東屋(あずまや)の、ロケットをつくるという行動をしだいに彼女なりにわかってきて、東屋を救う描写にも感じますが、
東屋を通して、夢、もしくは将来の目的を美鈴も教えられたのだと思いました。
そして、東屋のとっていた行動、彼の生きることは、何に救われていたのでしょうか。
私は、ヒロイン美鈴のこれからの夢、東屋の夢、二人の生きる力がループしているように最後は感じて面白かったです。
子供の頃の東屋が出会った生きるエネルギーとは、
高校生の美鈴がこの先の将来に対して見つけた生きるエネルギーとは、
そんなことを考える物語でした。
ストーリーはとても良く考えられていて、エピローグの部分も涙が溢れる作品でした。
この物語をおすすめの方
- 青春感動ストーリーが好きな方
- 物語としてお話しの作りが好きな方(エピローグになるほど!と感じたりするのが好きな方)
- 伏線があって、最後にネタバレ要素を含んだストーリーが好きな方
個人的にはこんな感じがしました。
私はこの小説に限らず、伏線のようなものがあったり、ネタバレ的なストーリーというのは、つねづね「感」が鋭くありませんでして、物語をみはじめたり、読み始めたりした時に「たぶんこんな感じになるんだなぁ」と想像するのが苦手です。
今回のように読後に「なるほど」とはじめと最後の部分がつながったりした瞬間は好きです。
ただ他の方の記事を参照させていただきましたが、「感」が鋭い方は、表紙の帯だけでどんな物語かわかったりするのでしょうか。
物語のつくり方、最後の部分などは、好みが別れる内容なのかもしれないと思います。
読後の感想としては、結局、この物語で救われたのは、ヒイロインの美鈴なのか、それとも東屋だったのか、そんなことを個人的には考える作品となりました。
ガラクタでロケットをつくり宇宙に行こうとしていた東屋を馬鹿にしていた美鈴、
夢に対してドライだった彼女の未来を救ったのは何だったのか、
そして東屋がこっそりと、現実的に叶いそうもないロケットづくりに駆り立てたものは何だったのか。
物語の視点は美鈴から描かれているので、この物語は女性目線、女性の方に共感のポイントがあるような気がします。
まとめ 東屋の2回目のキスの理由も面白かったです
「この空の上で、いつまでも君を待っている」の読後のまとめになります。
お話の流れがとても美しかったです。
物語の口調もPOPでした。
一点だけ私が感じた部分ですが、少し人間くささというか、ダークな部分というか、闇の部分がこの物語には少ないかもしれないと感じました。
私、個人としては、闇落ちですとか、人間のこころの汚い部分ですとか、少し生々しいリアルな描写あった方が感情移入がしやすかったりします。
性格上そういうストーリーを好むのだと思います。
ですので、読んで感じた「この空の上で、いつまでも君を待っている」の清々しく、さわやかな作風が、あくまで個人的な感想として、読後の物足りなさを少し感じたのも正直なところです。
ヒロインの美鈴の世間に対する、斜に構えた物の見方などは興味深かったのですが、物語全体としてのリアルな人間味というところは少し足りなかった気もします。(そもそもこの物語で陰鬱な表現を求めるのことじたいが違う気もしますが)
少し人間くさい、どろどろした感情を知りたい方にとっては眩しすぎる作品かもしれません。
ここは好みの問題かなぁと感じます。
この作品の眩しさにこころが少し耐えられなかったのかもしれません・・・。
とても綺麗な、純粋な青春ストーリーでした!!
最後にお伝えしたいところですが、エピローグが素敵でした。
読んでいる途中で個人的にいちばん気になった部分、東屋のキスが2回目であった意味をちゃんと知ったときに「良かったなぁ」と思いました。
ぜひ、映像化があれば別の角度からこの物語をさらに深く理解できるのではないかと感じます。
「美鈴」と「東屋」いったい、どちらが救われたのだろうか?と読後に感じた小説です。
なんども言いますが、個人的にはとても眩しくキラキラとした夏の一冊でした。
面白かったです。ありがとうございました。(下に感想を追記しております。)
追記(あとがき)
物語のキーマンと感じた「美鈴の姉」についてですが、この小説を買った時にはさまっていた「書き下ろし短編ペーパー」があったことを忘れておりました。
小説を読んで一日経過したあとで、ふと本を重ねてあった場所に、とりあえず置いてあった「書き下ろし短編ペーパー」の存在に気がつきました。
内容を読んで、本編よりも好きだったかもしれません。
本のあとがきにない部分、切り離されてあった存在、そんな短編がまるで期待してない人から届いた手紙のように感じました。
本にはさまっている「書き下ろし短編ペーパー」は本編、読後に読むのをおすすめします。
読書するにあたり、本の間にはさむのが少し邪魔だったのでよけておいて良かったです。
この短編を後から読んで、やっぱり美鈴の姉の存在も良かったなとあらためて感じました。
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