声優による朗読劇「銀河鉄道の夜」で日本文学を味わう

声が心地よくて、優れている朗読劇

声の優れた俳優によるドラマリーディング 日本文学名作選

第五弾「銀河鉄道の夜」(参照リンク:声すぐ

今回こちらを観てきました。

音 照明 声だけで演じる朗読劇でした。

席につくとまわりはほぼ暗い照明で、今の季節の虫の鳴き声が響いておりました。

10月中旬の今の季節にちょうど良い空間の雰囲気でした。

銀河鉄道の夜の話にこのような季節の描写はないように感じましたが、まさしく今の季節、鈴虫の鳴き声でもう夜になってひんやりしている空気を演出しておりました。

このドラマリーディングシリーズですが今までは夏目漱石をやっていたので気になっておりました。

「こゝろ」ですとか聴いてみたかったのですが今まで行こうとしてなかなかいけませんでした。

そして、今回はじめてドラマリーディングに行ってみたのですが、過去の作品も全て見れればという気持ちになりました。

おそらく映像として残ってないと思います。

せめてCDででも聴けないかと思うくらい、でも、その時の、一瞬の声の朗読、それを心にとどめて大切にしようと終わったあとに感じる朗読劇でした。

これはほんとに生のアフレコを目の前で見ている感覚です。

しかも、アカペラの歌も最後の部分であったのですがほんとに素敵でしたし、やっぱり声優であるので「声が優れて」いました。

私は下田麻美さんが出演されているのが気になっていたのですが、一緒に、進撃の巨人のミカサ役の石川由依さんや武内俊輔さん、中島ヨシキさんが出演が共演されている回に行ってきました。

 

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実際にはじまった感想

生のアフレコを目の前に緊張で視線をあげられないほど近い距離でした。幸いにもほぼ正面(すこし中央より右寄りでした)のいちばん前の席でした。

長細い舞台を中央に前からと後ろから朗読劇をみるスタイルでした。

真ん中に「天気輪」と思われる白い柱がある以外はあとは4つの白い椅子とも台座ともとれるオブジェのような置物。

それ以外には飾りがないシンプルなものでした。

入場した時に聞こえていた鈴虫の鳴き声がとまり、時計の針の音が聞こえはじめ、その針の音がだんだんと大きくなります。

針の音が止まった時に、

はじまりはスッと声優の方々がでてきて朗読劇が開始されました。

とにかく目の前だったので近かったです。朗読劇なので台本を持ちながら話すのですが角度によってその中身の文字が見えるくらい近かったです。

特にマーカーが引いてあったりはなく、物販で売られている台本と同じものを使用しているようでした。

下向きに話すときに真正面に声優さんがいると、見上げて顔を見てよいのか戸惑う感覚でした。

けっこう演者の方から舞台側の客席の景色や動きは見えると出演されている方が以前言っていたことがありました。

 

なので、ここは演じている方の話している時の顔を見るというよりは足元をみて、素晴らしい声の演技、宮沢賢治の文章を耳で集中して聴くような感じで声を感じて演技を観ておりました。

下手にうごくと演技してる方にも伝わるような距離感なので見ているこちら側が緊張してしまいます。

宮沢賢治の銀河鉄道の夜、このドラマリーディングを聴くまでに何度も読み直しました。

ところどころ、やはり涙をさそうポイントがあるのですがもう涙流してしまったら、涙を流したいがそれをこらえるのに精一杯でどこをみてよいのかわそらない・・・。

演じている方にも見えてしまう距離なのでほんとにじっと、しんどい時は少し目をつむって涙を流すのをこらえておりました。

でも後ろの席の方からは少しすすり泣く声がきこえました。

配役の部分

ジョバンニ役の石川由依さん、やはり旬の声優さんというか主役の役割は今人気の方になりそうです。実際に少年役のジョバンニの演技はぴったりでした。ほんとうのさいわいを探す旅、この物語の内容にぴったりの役柄だと思いました。

タイムテーブルを見ると他の回も配役は変わるのですが、ジョバンニ役は今勢いのある声優の方が多いような気がしました。

中島ヨシキさんはカムパネルラ役で少し控え目な役割、ジョバンニよりも落ち着いていて悟った感じの雰囲気がとても良かったです。

また作品の雰囲気の中で、武内駿輔さんが苦しい場面で良い味を出しており、灯台看守ですとか車掌さん、家庭教師の青年、カンパネルラの父などを演じて、気持ちの心象、解釈、手助けをしてくれる配役をしていたのが印象的でした。

しかもあの落ち着いた声で、ジョバンニ、カムパネルラに話しかける部分、伝える役目、諭すところ、私が座っている席からの角度がちょうど良かったのか良く表情がみえてちゃんと相手に対して視線を送りながら大切な場面は顔を見ながら話している。

朗読劇というよりは舞台の演技にみえるところが印象的でした。

下田麻美さんの配役も良かったです。

ザネリの意地悪な感じの演技からジョバンニの母役など病弱だけども子供を想う気持ちが良く伝わる話し方でした。

また鳥捕りや姉カホル、弟タダシとかなりの役を一人でこなしましたがとても舞台慣れしているのかほんとに朗読劇というよりは、もうまさに舞台でした。

 

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この朗読劇の良かった部分、すごいなと思ったところ

けっこうサイズが小さい場所で行われました。

東京FMホールだったのですが、

最前列で視線をあげられないうえにあげるのが難しい距離感、

演じている方の顔が目の前にある。

読んだ小説の内容とは最後少し違う、オリジナルの解釈の部分や伝え方、

本物の演技で、あたり前ですが朗読がうまいです。

どれだけ練習をしたのであろうかと感じました。

昔国語の時間に順番に本を読みましたが、もうそれの飛び切りすごいパターンというか、例えがおかしいかもしれませんが、感情も気持ちもこもった話し方なのでした。

しかも声が良すぎます。

そんなに練習の時間もないはずですがそのもののプロなのでやはり台本ありきでの演技はさすがに凄いと感じるばかりでした。

 

ですが、重要なところ最後の部分は台本なしの演技でした。

思わずそのやり取りの表情を見ずにはいられなかったです。

泣きそうで視線をおとしていましたが最後の部分はこの目でみて、表情も含む演技を目に焼き付けるので必死でした。

 

「星めぐりの歌」(作詞・作曲 宮沢賢治)アカペラの歌なども織り混ぜられて、作品全体のイメージの演出も凄かったですが、声だけでも、もう、本当に充分なくらいでした。

ジョバンニとカムパネルラの最後のやり取りがこの朗読劇のオリジナルだと思います。

私が読んだ小説、新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)では、カムパネルラは最後は登場しなかったのですが、この朗読劇では最後に、ジョバンニとカムパネルラは再会します。

これは、本当の再会なのか、それとも、ジョバンニの心の中でのカムパネルラとの再会の描写なのか難しいところですが、

二人で「星めぐりの歌」を歌いながら、こんな会話をします。

カンパネルラ「ジョバンニ。」

ジョバンニ「カンパネルラ。」

カンパネルラ「ほんとうのさいわいって、いったいなんなんだろう?」

ジョバンニ「・・・・・・僕にはわからない。でも、僕はもう、どんな大きな暗の中だって、こわくない。きっとみんなの、ほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでだって行ける切符を、僕たちは持っているんだ。」

カムパネルラ(うなずく)

「ドラマリーディング 銀河鉄道の夜」台本P102より抜粋させて頂きました。

 

ここは最後の見せ場でもあって、でもこのような演出を観れて良かったと感じました。

小説を読んで、突然、ジョバンニとカムパネルラの別れが訪れて読んでいたものとしても寂しい気持ちがあったのですね。

でも今回の朗読劇で二人はちゃんと最後に再会します。

そして答えを見つけて銀河鉄道の旅の意味を教えてくれました。

ジョバンニがカムパネルラの死後の天井へ行く銀河鉄道でカムパネルラと旅をした中で、それをカムパネルラに語りかけるように、そしてジョバンニ自身にも語りかけるように「ほんとうのさいわいを探しにいく」とこの旅の答えを伝えてくれました。

この朗読劇の雰囲気

今回、はじめての鑑賞でしたが、やはり声が素晴らしです。好きな声優の方が出ているだけでも十分に行く価値もありますし、ただ、その文学作品が好きだから行くというのでも、もちろんかまいません。

観にきていた客層の方は比較的若い方から中年の方まで年齢層は広いですが、あえて言うなら若い方の方が少し多いかなと思いました。

その回に出演されている声優の方によって変わってくるのかもしれませんが、女性の方が多かった気がします。

あとは単純に作品として銀河鉄道の夜が好きだから来ているという方も多かったようにみえました。

このような朗読劇で声優の方の魅力がたくさんの方に伝われば嬉しいなと感じました。

雰囲気じたいはかなり落ち着いております。

しずかでシーンとしております。

声優さんのほんとの声の演技を聴けるこのコンセプトは素晴らしいなと思いました。

しかも日本文学の名作も味わえる。

これはほんとに面白いです。

ちなみにパンフレットの解釈部分で、構成・演出の深作健太さんが銀河鉄道の夜について、銀河鉄道が走っている場所は、天の川でもあり、賽の河原でもあり、河畔鉄道でもあると記載がありました。

なるほど、夜空を飛んでいるイメージがありましたがそういう見方もできるかと。

このような補足の部分、自分で読んで、なお知れなかった他の角度での解釈、面白いなと感じました。

そして過去の作品を聴けなかったのが少し心残りになるようなそんな素敵な作品でした。

長い文章となってしまいましたが、ここまで読んで頂きまして、ありがとうございました。

 

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