小説「対岸の彼女」葵の父に対しての気持ち

男性の登場人物のなかでの唯一の救いの存在

 
※この記事にはネタバレが含みます。
 
以前の記事にて小説「対岸の彼女」のナナコについて記載いたしました。

もう一人私のなかで気になる人物が

葵の父親です。

このお父さんは「対岸の彼女」の中ででてくる登場人物の中でも唯一の救いのような人に思えました。
(伊豆のペンションの亮子さんも大好きですがここは葵のお父さんのお話しをしなければと思います。)

小夜子の旦那や、葵の会社プラチナプラネットに出入りする木原、みんなあまり良い感じはしません。この方の書く小説に登場する男性というのは皆あまり良い印象の人が少ないのですが、(そういうことを書いてある記事をみてそういえばそうかなって感じたことがありました。)それ現実的にあたっているのかなと思ってしまったりもします。

私も男性ですが正直、残念ながら正しいのかなって感じもします。

それで、ですが、

この「対岸の彼女」の中にでてくる葵のお父さんは、良い男性の登場人物なのですね。

葵にもこのような肉親が近くにいて良かったと思う存在です。

葵が伊豆のペンションにナナコとアルバイトに行くのを、葵のお母さんは認めないのですね。

そんな中、葵のお父さんは

何ごとも経験だ、民宿で働くなんていい機会だ、高校二年なんて立派な大人だ、ほろ酔いの父は頬を赤くして母を説き伏せ、毎晩電話をするという取り決めを交わし、ようやく母は了承した。

(「対岸の彼女」P116より抜粋いたしました。)

葵のお母さんはすこしヒステリックというか、すこし情緒の部分で問題があるように思えるのですが、葵のお父さんは私にとっても救いの存在に感じました。

葵と父親とのやりとり

この小説での葵とお父さんとの色々なやりとりも読み返すと涙が溢れてきます。

ほんとに良いお父さんだなって。

葵に対してしたアドバイスが好きです。

19歳の誕生日に銀の指輪を送りあう約束をナナコとしていた葵。19歳の誕生日には銀の指輪が欲しいことをお父さんとのやりとりで話します。

「指輪ァ?大人っぽいこというんだな。買ってやる、買ってやる、十九までまたなくてもニチイで買ってやるよ」安心したように父は陽気な大声で言う。「でもどうせなら銀なんてせこいこと言ってないで、プラチナ買ってやる」

(「対岸の彼女P247より抜粋いたしました。」)

タクシードライバーをしている葵のお父さん。

決して器用な印象はうけないですが、こういう人は私は好きです。ニチイというところも当時のセンスなのでしょうか。逆にこのお父さんらしさが滲み出てきます。

銀よりも高価なプラチナを買ってあげるという気持ちではなく、銀よりも強いプラチナの存在をそっと葵に教えるお父さん。葵のお父さんが意図してプラチナの存在を教えたかは不明ですが、こういうふうに人に物の価値をさらっとを伝えることができればなと思いました。

 

ナナコとの再会で、葵はプラチナの指輪を送りあうことをナナコと話ました。

「あのね、銀よりプラチナの方が強いんだって。だからあたし、ナナコにプラチナのリングをプレゼントする。そうすれば、銀よりずっとしあわせになれる」

(「対岸の彼女」P254より抜粋いたしました。)

小説からの引用ばかりで申し訳ありません。でもこの葵とナナコとのやりとりは好きでしかたありません。

いつの間にか、葵とナナコとのやり取りになってしまいましたが、ここまでに至る、葵とお父さんとのやり取りも愛情に満ちていて私は大好きです。ナナコと葵との再会の場をつくったのもこのお父さんの存在があったからです。

ラーメン屋さんでの葵とお父さんとのやり取りも大好きでした。

 

葵にこのようなお父さんがいて

葵にこういうお父さんがいてほんとに良かったと思いました。

不器用ですが、あたたかい、私にも一緒に暮らす父がいたのであれば、このようなお父さんがいたらなって思いました。

あまり、見栄ですとか、世間体とかそんなに気にしないような人に感じました。

読み手の方によって印象というのは違うと思いますのであくまで私なりの印象になります。

物語の最初の方に出てきた際のこのお父さんのタクシーの内装は南国風のディスプレイで派手なものでした。

でも、葵がナナコとの一連の件や、葵が成長していく過程で何か感じたのでしょうか。

葵とナナコを一緒に乗せるタクシーの内装はさっぱりとしたものに変わりました。

これも葵のお父さんの心境の変化のような気がします。

 

人というのは年齢を重ねてもなお、色々と考え感じて変化していく。

 

葵にとってのお父さんがこのような人物であったことが私にとっては救いでした。

 

※この記事には修正が入る可能性があります。まだ読み足りないところもありますので新しい発見があったら修正できればと思います。

 

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。

 


対岸の彼女 (文春文庫)
 

 

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